龍虎探偵2
シティ、それは世界で最も反映している都市の名前。
あまりにも巨大で、あまりにも強大であるが故にその都市は名前を持たず、ただシティとだけ言われている。
あるいはかつて、その都市には名前があったのかもしれない。
しかしそれはもはや誰も知らぬ名前であろうことは間違いない。
そんな名前を失った都市ではたくさんの何かが暗躍を繰り返していた。
光に群がるように、あるいは力に群がるようにか。
光が挿せば影がさす、正義が起これば悪が蔓延る。
それはもうどうすることもできない摂理であるとすら言える。
けれど、それをよしとしない。
悪に屈することを、認めることができない者たちもいるのだ。
そうして活動する者たちを人々は正義の味方と呼び、たたえた。
「ここね……」
そんな正義の味方である龍美と虎子は、とある病院の前にやってきていた。
いくつもある巨大な総合病院の一つだ。
日夜患者であふれる、周囲の医療を担う重要施設。
今は夜で対外的な機能の殆どは眠っているのだが、それでもこの施設が全て眠っているわけではない。
「よくお世話になってたけど」
まさかそれが、悪の秘密結社狂畜党の配下だったとは……
「私達もまだまだってことか」
自戒するように、あるいは挑戦するような目付きで病院を睨みつけた二人は夜の闇に隠れるようにその中へと忍び込んだのだった。
常人と隔絶した身体能力をもつ二人にとって人の少ない病院で誰にも見つかることなく行動するのはたやすいことだ。
影のように移動した二人は病院の奥にある大きなエレベーターに乗り込んだ。
「さて、資料によればここから行けるはず」
そしてコンソールを軽やかに叩いて、普段では行わない操作を数度繰り返す。
そうすると、小さな振動と共に動き出したエレベーターは地下へと向かい始め、案内表に記されている地下2階を超えてさらに地下へと向かっていく。
誰も知らなかった裏の顔、狂畜党のマッドネス病院がそこにあるのだ。
音がなって止まったエレベーターから出てきたのは、二人の看護婦だった。
二人とも医療に従事するものの格好とは到底思えない卑猥なナース服を身にまとっている。
一人はその大きな胸をほとんどさらけ出すような格好で、もう一人は豊満な尻を強調するような格好だ。
しかし、それを咎めるものなどいる筈もない、なぜならここでは医療など行われることはなのだから。
ここで行われるのは、背徳と狂気の混ざり合った医療の名を借りた何かなのだ。
二人はそこに紛れ込むために、奉仕ナースの格好をしていた。
その名の通り体を使って性的なサービスを行うナースのことだ。
「お、今日は新顔か?」
二人は恥ずかしげもなくまっすぐ歩くと検問へとたどり着いた。
隠されたマッドネス病院、そこに一般のものなどは入れるはずもない。
強面、というにはあまりにも人並み外れた薬物強化兵がにやにやと下品な笑みを浮かべながら二人を嬲るように見た。
二人は何も言わずに、首から下げていた通行証を見せる。
「OK問題はなさそうだな。通っていいぜ……と、部屋を教えてくれよ。後で行くからさ」
ほとんど確認することなく二人を素通りさせた門番は、下品な笑みのまま二人に手を振って見送った。
にこやかに頷いた二人はそのままそこが見えなくなるまで歩き。
「……馬鹿な門番で助かったわ」
「本当、一応偽造パスも一級品だけど。楽であるに越したことはないものね」
「そうそう。さ、早いとここーた君のお母さんを見つけましょう」
「そうね、こんな服さっさと脱ぎたいもの」
「あら、それで誘惑するのかと思ってたのに」
「誰をヨ、誰を」
そんなことを言いながら二人は闇に潜むように人目を逃れ、誰にも見つかることなく目的の部屋へとたどり着いた。
患者、あるいは被害者といったほうがいいのか。
そのすべての情報が詰まったカルテの収められた部屋だ。
引き出しからそのいくつかを取り出して眺めると。
「うわ、ここだけでシティの事件の5分の1は解決しそうね」
そこに書いてある名前、その内容に目をくらませた。
そこに記されていたのは、人間が変わっていく過程だ。
「できれば全部持って帰りたいけど……」
「状況的に無理ってものよ。さあ、早く探しましょう」
カメラはおろか電子機器の一つもこの中に持ち込むことはできないのだ。
馬鹿な門番ではあったが、入り口に付けられたセンサーは確実に彼女たちが隠し持った機器を見付け出してしまうことだろう。
故に、それらを持ち込むことは出来ず。
二人は目的の人物、こうたの母のカルテを見つけ出すことに専念したのだ。
以前マッドネス怪人の研究所を襲撃した際に手に入れたデータには、確かにここに運び込まれたと記されていたのだ。
正確な期日まではわからない、けれどマッドネス怪人はある種最も面倒な能力を持った怪人だ。
薬物、手術、呪術、ありとあらゆる手段を持って人を作り替えることに特化した怪人。
それがマッドネス怪人なのだ。
出来ればまだ人間のままで有って欲しい。
二人がその手を早めるのも、無理なからぬことだった。
「あった!!」
ようやく見付け出したカルテを取り出したその時だ。
「何をしている!!」
暗い部屋に明かりが灯り、二人の行為を咎める声が響いた。
振り返れば白衣を着た、医者らしき男が扉を開けて立っている。
「奉仕ナース……?」
二人の姿に一瞬目を細めた男は、その肢体を舐め回すように見て首を振った。
「いや、お前らみたいにいい尻と胸をした奉仕ナースは知らない……何者だ?」
そして、二人が手に持っているものを見て。
「侵入者か……」
近くにあった警報装置を鳴らしたのだ。
「どこの組織のものかは知らんが、ここから生きて出れると思うなよ……」
余裕を持った笑みを二人に向けて。
「なあに、殺しはしない。お前らに極上の肉体をプレゼントしてやるとも」
勝ち誇ったようにそういうのだった。
あまりにも巨大で、あまりにも強大であるが故にその都市は名前を持たず、ただシティとだけ言われている。
あるいはかつて、その都市には名前があったのかもしれない。
しかしそれはもはや誰も知らぬ名前であろうことは間違いない。
そんな名前を失った都市ではたくさんの何かが暗躍を繰り返していた。
光に群がるように、あるいは力に群がるようにか。
光が挿せば影がさす、正義が起これば悪が蔓延る。
それはもうどうすることもできない摂理であるとすら言える。
けれど、それをよしとしない。
悪に屈することを、認めることができない者たちもいるのだ。
そうして活動する者たちを人々は正義の味方と呼び、たたえた。
「ここね……」
そんな正義の味方である龍美と虎子は、とある病院の前にやってきていた。
いくつもある巨大な総合病院の一つだ。
日夜患者であふれる、周囲の医療を担う重要施設。
今は夜で対外的な機能の殆どは眠っているのだが、それでもこの施設が全て眠っているわけではない。
「よくお世話になってたけど」
まさかそれが、悪の秘密結社狂畜党の配下だったとは……
「私達もまだまだってことか」
自戒するように、あるいは挑戦するような目付きで病院を睨みつけた二人は夜の闇に隠れるようにその中へと忍び込んだのだった。
常人と隔絶した身体能力をもつ二人にとって人の少ない病院で誰にも見つかることなく行動するのはたやすいことだ。
影のように移動した二人は病院の奥にある大きなエレベーターに乗り込んだ。
「さて、資料によればここから行けるはず」
そしてコンソールを軽やかに叩いて、普段では行わない操作を数度繰り返す。
そうすると、小さな振動と共に動き出したエレベーターは地下へと向かい始め、案内表に記されている地下2階を超えてさらに地下へと向かっていく。
誰も知らなかった裏の顔、狂畜党のマッドネス病院がそこにあるのだ。
音がなって止まったエレベーターから出てきたのは、二人の看護婦だった。
二人とも医療に従事するものの格好とは到底思えない卑猥なナース服を身にまとっている。
一人はその大きな胸をほとんどさらけ出すような格好で、もう一人は豊満な尻を強調するような格好だ。
しかし、それを咎めるものなどいる筈もない、なぜならここでは医療など行われることはなのだから。
ここで行われるのは、背徳と狂気の混ざり合った医療の名を借りた何かなのだ。
二人はそこに紛れ込むために、奉仕ナースの格好をしていた。
その名の通り体を使って性的なサービスを行うナースのことだ。
「お、今日は新顔か?」
二人は恥ずかしげもなくまっすぐ歩くと検問へとたどり着いた。
隠されたマッドネス病院、そこに一般のものなどは入れるはずもない。
強面、というにはあまりにも人並み外れた薬物強化兵がにやにやと下品な笑みを浮かべながら二人を嬲るように見た。
二人は何も言わずに、首から下げていた通行証を見せる。
「OK問題はなさそうだな。通っていいぜ……と、部屋を教えてくれよ。後で行くからさ」
ほとんど確認することなく二人を素通りさせた門番は、下品な笑みのまま二人に手を振って見送った。
にこやかに頷いた二人はそのままそこが見えなくなるまで歩き。
「……馬鹿な門番で助かったわ」
「本当、一応偽造パスも一級品だけど。楽であるに越したことはないものね」
「そうそう。さ、早いとここーた君のお母さんを見つけましょう」
「そうね、こんな服さっさと脱ぎたいもの」
「あら、それで誘惑するのかと思ってたのに」
「誰をヨ、誰を」
そんなことを言いながら二人は闇に潜むように人目を逃れ、誰にも見つかることなく目的の部屋へとたどり着いた。
患者、あるいは被害者といったほうがいいのか。
そのすべての情報が詰まったカルテの収められた部屋だ。
引き出しからそのいくつかを取り出して眺めると。
「うわ、ここだけでシティの事件の5分の1は解決しそうね」
そこに書いてある名前、その内容に目をくらませた。
そこに記されていたのは、人間が変わっていく過程だ。
「できれば全部持って帰りたいけど……」
「状況的に無理ってものよ。さあ、早く探しましょう」
カメラはおろか電子機器の一つもこの中に持ち込むことはできないのだ。
馬鹿な門番ではあったが、入り口に付けられたセンサーは確実に彼女たちが隠し持った機器を見付け出してしまうことだろう。
故に、それらを持ち込むことは出来ず。
二人は目的の人物、こうたの母のカルテを見つけ出すことに専念したのだ。
以前マッドネス怪人の研究所を襲撃した際に手に入れたデータには、確かにここに運び込まれたと記されていたのだ。
正確な期日まではわからない、けれどマッドネス怪人はある種最も面倒な能力を持った怪人だ。
薬物、手術、呪術、ありとあらゆる手段を持って人を作り替えることに特化した怪人。
それがマッドネス怪人なのだ。
出来ればまだ人間のままで有って欲しい。
二人がその手を早めるのも、無理なからぬことだった。
「あった!!」
ようやく見付け出したカルテを取り出したその時だ。
「何をしている!!」
暗い部屋に明かりが灯り、二人の行為を咎める声が響いた。
振り返れば白衣を着た、医者らしき男が扉を開けて立っている。
「奉仕ナース……?」
二人の姿に一瞬目を細めた男は、その肢体を舐め回すように見て首を振った。
「いや、お前らみたいにいい尻と胸をした奉仕ナースは知らない……何者だ?」
そして、二人が手に持っているものを見て。
「侵入者か……」
近くにあった警報装置を鳴らしたのだ。
「どこの組織のものかは知らんが、ここから生きて出れると思うなよ……」
余裕を持った笑みを二人に向けて。
「なあに、殺しはしない。お前らに極上の肉体をプレゼントしてやるとも」
勝ち誇ったようにそういうのだった。
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続きがとても気になりますね!
次の回を楽しみにしています!
次の回を楽しみにしています!
Re: タイトルなし
>強制博士さま
コメントありがとうございます。
ゆっくり更新していく予定ですので気長にお待ちください
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