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目覚めるディアクリスタル

銀、と言うよりは白銀といったほうがより正確だろう。
ベッドに寝かされた人物のまとっている鎧は、神々しいほどの輝きを放っていた。
戦乙女を思わせる美しさと獰猛さが同居する鎧を身に纏い、純白のベットにはまるで草原のようにエメラルド色の髪が広がっている。
その人物は目を閉じて、整った呼吸を行なっていた。
ふと、意識のない彼女のそばに影が立った。
白衣を纏った影は彼女を見下ろすと、そのしなやかな髪を優しく撫でる。

「ディアクリスタル……あなたは届き得るのかしら?」

その言葉を聞いたものはいない。



意識を取り戻した彼女がまず見たのは、真っ白な天井だった。
体を起こせばそこはベッドで、周囲をカーテンで囲まれてはいるのものそこが彼女の知るところでないのはすぐに分かった。
消毒液のような、病院のような匂いが鼻をついたからだ。
果たして自分がなぜこんな所にいるのか……
記憶をさかのぼって、そして思い当たるのは怪人にいいようにしてやられるおのれの姿だ。
頬を染め、自らの局部に手を伸ばす。
誰かが処理をしてくれていたのか、その痕跡は残っていなかった。

「あれ、変身解けてる……」

ディアクリスタルとしての変身が解かれていたことに気がついたのは、その時だ。
本来彼女の意思によってしか解除されるはずのないクリスタルスーツがないことに一握の不安を覚えながら。
彼女は静かにベッドから降りた。
音を立てずにカーテンをくぐると、その先に広がっていたのはある意味予想道理な病室のような光景だ。
ベッドが並び、棚には薬瓶が詰め込まれている。
そこかしこには何に使うかわからない器具や、どこかで見たような器具が揃えられていた。

「起きたのね」

そして、そこに置かれていた机に一人の女性が向かっていた。
メガネに白衣、後ろに無造作に束ねられた髪。
医者と言うよりは、博士といった印象を受ける女性だ。
女性は、彼女の方を向くこともなく答えた。

「とりあえず、体の方は綺麗にさせてもらったわ。あなたに精液に汚れたままで痛いっていう願望があったなら謝罪するけど?」

「いえ……ありがとうございます」

「いいわね、お礼は挨拶の基本よ。あなたよくわかってる」

うんうん、と頷く女性に、彼女は問いかけた。

「それで、あの……ここは?」

「あなたと同じ、正義の味方のアジトよ。ディアクリスタル……いいえ、金剛寺輝石さん」

一瞬彼女はたじろいだ。
ディアクリスタル=金剛寺輝石であるという事実関係を知っているものは輝石自身以外にイないはずだったから。

「不思議そうね?なんであなたの名前を知っているかって。そう思っているのがありありと分かるわ。素直ね」

輝石は、何も答えない。
眼の前にいる相手を測りかねていた。
敵か、味方か。
今まで彼女に、味方なんていなかったけれど。

「あら怖い。そうね、襲われても嫌だしねたばらし。私はね、あなたのお父さん、金剛寺巌博士と一緒に研究をしていたことがあるの」

「父と!?」

予想だにしなかった名前が出てきたことに驚き、思わず声を上げてしまう。
その驚きすらも予想通りだったのだろう、彼女は頷いて。
そこでようやくからだを輝石の方へと向けた。
持っていたペンを、輝石の方に向け。

「そうよ……それの研究をしていたの」

それ、と言われて、輝石はそれだけで理解する。
そのペン先が指し示しているものを。
手を胸に押し当て、そこにあるものをつぶやく。

「ホープクリスタル」

それは、希望の結晶。
あるいは、輝石を縛り付ける忌まわしい代物。

「巌博士は、人生のすべてをその研究に費やしていたわ……ねぇ、教えて。私と彼がわかれた後、あの人は研究を完成させたの?」

彼女は立ち上がり、カツカツと音を立てて輝石へと近づいた。
そして、しなやかな指で顎を掴み軽く上を向かせる。
二人の視線が、交差した。
眼鏡の奥の真っ黒な瞳はまるで吸い込まれそうで、輝石は思わずよろけてしまう。
たじろぐように視線を逸らすと、

「父のことは、よく覚えていません……いつも、研究所にこもっていましたから」

そう、つぶやいた。

「そうね、彼はそういう人だわ。でもそれはきっと……」

白い指が、輝石の肌を這いまわる。
ボサボサの髪に、手櫛のように指を入れ、そして耳元で赤い唇が蕩けるような声色で開いた。

「あなたを、守るためだったのよ」

ゆっくりと輝石の背後に回った女の手が、輝石の体を這いまわる。
制服の上から、あるいはその下に潜りこむように無遠慮に。

「私は知らない、巌博士の研究が完成したのかどうか……」

軽く身を捩る輝石の小さな体を好きなままに弄って。

「だから私に、あなたの全てを見せてちょうだい」

淫靡そのままの声で、女は輝石の耳を甘噛みした。

「……あ」

与えられる性感に、思わず声を上げてしまう。
それだけで彼女の体は抵抗をやめてしまい、全身から力をぬいて後ろにしなだれかかった。

「気持いいのね?」

小さく頷く。
もはや小さなその体は、快楽と言うなの呪縛から逃げられないでいたのだ。
ディアクリスタルとして戦い、敗北し、犯された回数はもはや一度や二度ではない。
その全てで結果的に勝利を納めているとは言え、人外の快楽を与えられ続けた彼女の体はもとの輝石の体に戻っても快楽に弱くなっていたのだ。
指が体を撫でるたび、そこが性感帯になってしまったかのように体をはねさせる。

「いい感度……それとも、コレのせい?」

甘い声で言いながら輝石の薄い胸をこね回す、いや、その奥にあるものを。

「願いを叶えるホープクリスタル……あなたが私の思うままに感じているのは、これが私の願いを叶えてくれているからしら?」

問いかけに答えはない。
ただ、返答替わりに痙攣が返ってきた。

「あら、イッたんだ……あは、なんだか面白い」

面白そうに笑って、そして淫靡な笑みを浮かべる。

「ねえ、もしかしておっぱいも見ながら大きくなれって思ったり、ちんちんは得ないかなって思ったら生えてくるのかしら?」

何も答えない輝石をベッドへと寝かせた彼女は、自らもその上に乗ろうとして、ふと足を止めた。
振り返り、反対にある扉を睨みつける。

「タイミングが悪いわね」

小さくつぶやくと、お互いの乱れた服装を軽く整えて、ベッドの端に腰掛けた。

「続きをする前に、あなたに見てほしいものがあるわ」

朧気に意識を覚醒させていた輝石に、彼女は話しかけた。
その言葉が終わるかどうかというタイミングで、部屋の扉が開いた。

「失礼します」

キリッとした声と共に入ってきたのは、3人の少女達だった。
年の頃は輝石と同じ程度だろうか。
誰も彼もが美人といっていい用紙をしていて、激しく自分を主張する格好をしていた。
色気のない自分とは大違いだ、そう思いながらも視界に映る3人がどこか自分に似ているような、そんな感覚を覚えるのだった。
それを肯定するように女が立ち上がり、そして自慢げに少女達を紹介した。

「紹介するわ。彼女たちはダガークリスタル。まあ、あなたの妹みたいなものかしら?」


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